木材として古くから利用されてきた木。日本全土で植林されている。日本原産で天然林も存在する。
陽樹だが幼木は耐陰性あり。針葉樹の中では根っこも枝も出しやすい。森では倒木や切り株の上で発芽しているのをよく見かける。実生の他、伏条更新(特に日本海側の品種。垂れ下がった枝が地面に付くとそこから根を出し、枝が幹のように成長を始める)も見られる。太平洋側と日本海側では形態的・生態的・遺伝的差異があり、それぞれオモテスギ、ウラスギと呼ばれる。(葉や枝ぶりの形状の違いが分かりやすい。気候、特に降雪量による違いが大きい)、遺伝特性、地域の品種を守るため種苗の移動は規制されている。人工林でも自然淘汰が進みやすく、広葉樹も混交しやすい。自然林では大きな群落を作らず、数本の固まりで広葉樹と混じる。
木材としては、品種特性と育て方により各地にブランド品種が存在し、木工や建築と一体となった文化を形成してきた。水分(降雨量、湿度)の多い土地のものほど油気が多く、粘り強く水に強い傾向がある。・品種例飫肥杉:宮崎県。樹脂を多く含んでいるため吸水性が低く、軽量で強度が高いことから造船用として盛んに利用された。水に強いことから、ウッドデッキやフェンス材にも利用されている。山武杉:千葉県。2019年の台風被害で有名になった山武杉は、溝腐れ病や風雪に弱いという弱点ばかり挙げられてしまったが、そのねじれやすい性質は適切に育てれば木材としての強度を高め、こだわって使っている工務店もあるほど。近年の台風補害は、伝統的な育林方法をしなくなってしまったからという意見もある。越後杉:新潟県。雪国で成長速度が遅く、粘り強さとしなやかさを持つ。台杉(※仕立て方):京都市北山地方で行われている特殊な育て方。針葉樹の中でも腋芽の発生しやすい杉の特性を活かして、同じ株から伸びた幹を20年ほどのサイクルで伐採収穫する。急峻で造林が難しい地域で、植林の手間をかけず、搬出のしやすい細い丸太を高品質に育てるという先人の知恵の詰まった育林方法。独特の姿は庭園にも利用され、海外でも高く評価されている。シロスギと呼ばれる、樹齢を重ねても真っすぐに育ち続けるマザーツリー元になっている。気候風土から生まれた遺伝特性と人の知恵の結晶。